MIT Japanese III
Lesson 13 Reading C
「親」
東京駅の近くの長野研究所でソフトウェアのプログラミングの仕事をして,今年で四年になるが、青森の両親の家にはぜんぜん帰っていない。両親は青森で小さい本屋をしている。高校の時
までは、いずれ父に代わって本屋の仕事をしたいと思っていた。でも、大学の時東京に出てきて、大きい町の方がおもしろくなって、青森には帰りたくなくなっ
たのだ。うちの町は東京とちがって、大きいレコード屋もコンピュータ
のディスカウントショップも何もない。だから、若い人はみんな町を出て行く。ぼくもその一人だった。父はすごくおこったが、別にかまわなかった。
こわい父に遠慮して、母からは電話はかかってこないが、手紙は一ヶ月に
一度くらい来る。でも、ぼくから両親には連絡はほ
とんどしていない。同じ会社のアメリカ人のスミスさ
んは毎日テキサスのご両親やご兄弟とスカイプで話しているが、日本人はたいていぼくと同じで、家族への連絡を大切に思っていないんじゃないかと思う。電話
はこの四年間に二度だけ家にかけた。はじめは二年前で、久し
ぶりに母の声を聞きたいと思ってかけたのだが、だれも電話に出なかった。外出中だったのかもしれないが、別に用事はなかったのでかけ直さなかった。次は、少しお金が借りたくて半年前に電話をしたが,父が出たのですぐ
切った。父はむずかしい人なので、今もおこっているだろうと思ったからだ。
でも、今日の母からの手紙で、気持ちが大きくか
わった。封筒には手紙のほかに父と母の写真が一枚。四年前は母も父も黒い髪だったが、その写真の二人の髪
は白くなっていた。本当は六十才ぐらいだが八十才
のお年寄りに見えて、びっくりした。仕事が大変だったからこんなに早く白くなったのだろうか?どうして
ぼくはこの四年間、両親の心配をしなかったのだろうかと思って、すごくはずかしくなった。
今晩、半年ぶりに青森に電話をしたいと思っている。 父が電話に出るかもしれないが、今度は電話を切らないつもりだ。
親(おや)
帰る(かえる)
町(まち) town, city
だから therefore
若い (わかい)
おこる get angry
こわい scary
遠慮(えんりょ)reserve, hesitation
連絡 (れんらく)
久しぶり(ひさしぶり)
かけ直す(かけなおす)
お金(おかね) money
気持ち(きもち)feeling
封筒(ふうとう)
一枚(いちまい)
写真(しゃしん)photo
髪(かみ)hair
六十才(さい)
お年寄り(おとしより)
Xに見える look like ~
心配(しんぱい)worry
はずかしい ashamed
つもり intention