MIT Japanese III
Lesson 15 Reading C
「洋子」
僕は食べることが大好きだから、京都大学1年生の時に食べ歩き
サークルを作って、その部長になった。
同じサークルの学生とは、だいたい一週間に二度ぐらいおいしいレストランをネットで調べて、そこで昼ご飯や晩ご飯を食べている。でも、男の学生がほとんど
で、みんな肉と酒が好きだったから、たいてい焼き肉屋に
行って、肉を食べて、後は遅くまで飲んでいた。酒
を何杯も飲みすぎてアパートに帰れなくなったこと
も何度もある。
だから、洋子がメンバーになった時には「やった!」
と思った。洋子は僕の大学の近くの女子大の学生
で、食品工学を勉強している。彼女はサークルの中
で、
いや、京都の女の子の中で一番きれいでやさしい、と思った。今はサークルでの食べ歩きの時は、なるべく焼き肉屋
よりも和食のレストランにしている。洋子が肉よりの鳥や魚や野菜の
料理の方が好きだからだ。彼女のおかげでみんな健康に
なってきたんじゃないだろうか。
・・・
先週の土曜日、もう十一月だけどいつもより暖かく
ていいお天気だったので、洋子と二
人だけで朝から鞍馬山にマウンテンバイクに行っ
た。彼女は小さいがす
ごく元気で、特にマウンテンバイクが大好きなのだ。せっかくのお天気だから海にドライブにも行きたかったが、日本海の方はそれほど暖かくないだろうと思っ
て、やっぱり山にした。昼ご飯は洋子の手作りで、
僕の大好きなえび天サンドだった。もちろん熱いお茶も水筒で持って行った。重かったので僕がお弁当もお茶
も全部持った。
「頂上までどっちの方が先に行けるかな?競争しない?」
と洋子が言った。
「、、うん、いいよ。」
とは言ったが、実は僕はマウンテンバイクはそれほ
ど上手
ではない。特に山の中の道は細くて右にも左にも木
の枝がたくさんあるから、前が見にくくて大変だった。洋子はどんどん先に行って、十分ぐらいで見えなくなった。早く彼女
に追いつきたいと思ったが、しばらくして道が分か
らなくなった。そんな時、大きな、大きな黒い鳥が目の前に出てきた。これほど大きなのは
初めて見た。僕はびっくりして、せっかくのえび天サンドを道に全部落
としてしまった。
それから五時間ほどでやっと山の頂上の洋子が見えた。きっと彼女は何時間も僕を待っていただろうから、おなかもすいていただろう。でも、えび天サンドの外
には何も持ってきていなかったから、食べ物は何もなかった。僕は恥
ずかしくて、洋子の顔が見られな
かった。でも、彼女は僕を見て「どこかで具合が悪
くなっ
たのかと思ったけど、よかった〜!」と言った。ああ、やっぱり日本で一番やさしい女の子だ、と思った。その後、いっしょに熱いお茶を少しずつ飲んで、しば
らく頂上から京都の町を見ていた。おなかはすいて
いたが、僕の胸はいっぱいだった。
僕(ぼく)
食べること (the act of) eating
焼き肉屋(やきにくや) BBQ restaurant
遅い(おそい)
帰る(かえる)
だから therefore
やった Did it!
女子大(じょしだい)women’s college
食品工学(しょくひんこうがく) (study of) food technology
野菜(やさい)
健康(けんこう)
暖かい(あたたかい)
お天気(おてんき)weather
鞍馬山(くらまやま) mountain located in north of Kyoto City
熱い(あつい)
水筒(すいとう)thermo
お弁当(おべんとう)
重い(おもい)heavy
頂上(ちょうじょう) the top, the summit
競争(きょうそう) race, competition
実は(じつは)
細い(ほそい)narrow, thin
枝(えだ)branch
大変(たいへん)
どんどん rapidly, without hesitation
追いつく(おいつく)catch up
落としてしまう(おとしてしまう)happen to drop X
恥ずかしい(はずかしい)be embarrassed, be ashamed
顔(かお)
具合(ぐあい)
町(まち) town
胸(むね)the chest, one’s heart