私は、
あなたの
御
出世を
憎んでいるのではございません。
あなたの、
不思議な
ほどに
哀しい
画が、
日一日と
多くの
人に
愛されているのを
知って、
私は
神様に
毎夜
お礼を言いました。
泣く
ほど
嬉しく
思いました。
あなたが
淀橋の
アパートで
二年間、
気のむく
ままに、
お
好きな
アパートの
裏庭を
描いたり、
深夜の
新宿の
街を
描いて、
お金が
まるっきり
無くなった
頃には
但馬さんが
来て、
二、三枚の
画と
交換に
十分の
お金を
置いて行く
のでしたが、あの
頃は、
あなたは、
但馬さんに
画を
持って行かれる
事が、
ひどく
淋しい
御
様子で、
お金の
事に
など、
てんで
無関心でありました。
但馬さんは、
来る
度毎に
私を、
こっそり
廊下へ
呼び出して、
どうぞ、
よろしく、
と
きまった
ように
真面目に
言って
お辞儀をし、
白い
角封筒を、
私の
帯の
間に
つっ込んで下さる
のでした。
あなたは、
いつでも
知らん顔をして
居りますし、
私だって、
すぐその
角封筒の
中味を
調べる
ような
卑しい
事は
致しませんでした。
無ければ
無いで、
やって行こうと
思っていた
のです
もの。
いくら
いただいた
等、
あなたに
報告した
事も、ありません。
あなたを
汚したくなかった
のです。
本当に、
私は
一度だって、
あなたに、
お金が
欲しいの、
有名に
なって
下さいの、と
お願いした
事は
ございませんでした。
あなたの
ような、
口下手な、
乱暴な
お
かたは、(
ごめんなさい)
お金持にも
ならない
し、
有名に
など
決して
なれる
ものでないと
私は、
思っていました。
けれども、それは、
見せかけだったのね。
どうして、
どうして。
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