がその 掛茶屋先生見た は、 先生ちょうど 着物脱いで これから はいろうとするところ であったその時 反対 濡れた 身体吹かして から あがって 来た二人には 遮る 幾多黒い 動いていた。 特別事情ない限りついに 先生見逃した かも知れなかったそれほど 浜辺混雑し、 それほど 放漫 であった にもかかわらずすぐ 先生見付け出したのは、 先生一人西洋人伴れていた から である

 その西洋人優れて 白い 皮膚が、 掛茶屋入る否やすぐ 注意を惹いた純粋日本浴衣着ていた は、それを 床几すぽり 放り出した まま腕組みをして 向いて 立っていた。 我々穿く 猿股 一つ 何物着けていなかった。 にはそれが 第一 不思議だった。 はその 二日 由井が浜 まで 行ってしゃがみ ながら長い間 西洋人入る 様子眺めていた。 おろした 少し 小高い で、その すぐ ホテル裏口 なっていたので、 としている に、 大分 多く浴び出て来たが、 いずれも 出していなかった。 殊更 隠し がち であった大抵護謨 頭巾被って海老茶波間浮かしていた。 そういう 有様目撃した ばかりには、 猿股 一つ済まして 皆な立っているこの 西洋人いかにも 珍しく見えた

 やがて 自分顧みて、そこに こごんでいる 日本人に、 一言 二言 何か いった。その 日本人落ちた 手拭拾い上げている ところ であったが、それを 取り上げる否やすぐ 包んで歩き出した。その すなわち 先生 であった

 単に 好奇心 のために並んで 浜辺おりて 行く 二人後姿見守っていた。 すると 彼ら真直踏み込んだそうして 遠浅 近くわいわい 騒いでいる 多人数通り抜けて比較的 広々した 所へ 来ると、 二人とも 泳ぎ出した彼ら小さく 見える まで 向いて 行ったそれから 引き返して また 一直線浜辺 まで 戻って来た掛茶屋帰ると、 井戸浴び ずにすぐ 身体拭いて 着物着てさっさとどこへか 行って しまった

 彼ら出て行った やはり 床几腰をおろして 烟草吹かしていた。その時 ぽかんと しながら 先生考えたどうも どこか見た のある ように 思われ てならなかったしかし どうしても いつどこで 会った 想い出せ ずに しまった

   その時屈托がない というより むしろ 無聊苦しんでいた。 それで 翌日 また 先生会った 時刻見計らってわざわざ 掛茶屋 まで 出かけて みたすると 西洋人来ない先生 一人 麦藁帽被って やって来た先生眼鏡とって 置いてすぐ 手拭包んですたすた 下りて 行った先生昨日ように 騒がしい 浴客通り抜けて一人で 泳ぎ出した 急に その後追い掛けたくなった浅い まで 跳かして 相当深さところ まで 来てそこから 先生目標抜手を切ったすると 先生昨日違って一種弧線描いて妙な 方向 から 帰り始めたそれで 目的ついに 達せられなかったあがって 垂れる 手を振り ながら 掛茶屋入ると、 先生もう ちゃんと 着物着て 入れ違い出て行った