プリンタはドキュメントのハードコピー — データを物理的に紙に描写したもの —、ビジネスのみならずあらゆる分野における書類などを作成するのに欠かせないリソースです。プリンタはあらゆるビジネス、企業のコンピュータ環境に欠くことのできない周辺機器になってきました。
この章では各種プリンタを解説し、異なるコンピュータ環境でのプリンタ使用を比較しています。また、Red Hat Enterprise Linux がどのように印刷をサポートするかを解説しています。
他のコンピュータ周辺機器と同様に、利用できるプリンタには何種類かあります。マニュアルのタイプライタ形式の機能を真似たテクノロジーを採用しているプリンタもあれば、印刷紙にインクを吹き付けるものや、印刷するページのイメージを生成するレーザーを利用したものもあります。プリンタハードウェアは PC やパラレル、シリアル、データ、データネットワークプロトコルなどを使用したネットワークで入出力を行います。ご使用のコンピュータ環境へのプリンタ購入や導入を検討する際に考慮する要素がいくつかあります。
次のセクションでは各種プリンタタイプとプリンタがコンピュータとの通信に使用するプロトコルについて解説しています。
プリンタの検討にはいくつか考慮にいれる点があります。次に印刷に関する必要事項を検討する際の最も一般的な事項をいくつか列記します。
企業のニーズを検討すること、プリンタがこれらのニーズにどのように役に立つかは、環境に適する種類のプリンタを選ぶ上で必須の事項となります。"何を印刷するのか?"を考えることが最も大切です。テキスト、イメージ、またはそのバリエーションに特化したプリンタがあるため、目的に応じて適切なツールを購入する必要があります。
例えば、高品質カラーイメージをプロ志向の光沢紙に印刷する必要がある場合、レーザープリンタやインパクトプリンタではなく昇華型カラープリンタまたは溶融型カラープリンタを使用することをおすすめします。
逆に、社内での使用を目的としたドラフトや文書類を印刷するにはレーザープリンタやインクジェットプリンタが便利です(このような大容量プリンタは一般的にワークグループプリンタと呼ばれています)。日常的に使用するユーザーのニーズを知ることで管理者はその業務に適したプリンタを選択することができます。
他に考慮する点としては両面印刷などの機能です。1枚の紙の両面に印刷ができる機能です。従来、プリンタは片面しか印刷できませんでした(片面印刷)。今日の低価格プリンタモデルにもデフォルトでの両面印刷機能はありません(ただし、ユーザーが印刷紙を裏返して行うマニュアルの両面印刷方法はできるかもしれません)。両面印刷用のアドオンハードウェアを提供するモデルもあります。こうしたアドオンで購入、設定など導入時のコストがかなり引き上げられる可能性があります。しかし、両面印刷機能はドキュメントの印刷に使う用紙の量を削減することができるため長期的には経費の削減となる場合があります。従って、消耗品の経費削減につながるわけです — 主に印刷紙にかかる経費。
考慮する点として用紙のサイズもあります。ほとんどのプリンタが一般的な各用紙サイズを処理することができます。
レター — (8 1/2" x 11")
A4 — (210mm x 297mm)
JIS B5 — (182mm x 257mm)
リーガル — (8 1/2" x 14")
特定の部署で(マーケティングやデザインなど)ポスターやバナー作成の特殊な必要性がある場合は、A3 (297mm x 420mm)またはタブロイド(11" x 17")サイズを使用できるLarge Formatプリンタがあります。さらに、もっと大きいサイズの印刷ができるプリンタもありますが、設計図などの特殊化した目的にしか使用されません。
また、リモートサイトでの印刷やワークグループのネットワークモジュールなどハイエンド機能も検討にいれる必要があるでしょう。
コストはプリンタの検討で考慮に入れる点のひとつです。しかし、プリンタの購入、設定など導入時のみのコストだけでは十分とは言えません。消耗品、パーツとメンテナンス、プリンタの付属品など考慮にいれるコストは他にもあります。
消耗品とはその名の通り、印刷時に使用する資材を指す一般的な用語です。消耗品とは主に メディア及びインクになります。
メディアとはテキストまたはイメージを印刷する資材のことです。メディアの選択は印刷する情報の種類によって大きく異なります。
例えば、デジタルイメージを鮮明にプリントする場合は、自然光や人工照明に長期間さらされる状況に耐えうる特殊な光沢紙を必要とし、また色の正確な再生も要求されます。こうした品質は色堅牢性と呼ばれています。耐久性や技術的な明瞭性を必要とするアーカイバル(保管目的の)品質を要する文書(契約書、カリキュラム、永久保存記録など)には、マット(光沢がない)な用紙を使用します。用紙のストック(厚み)も重要です。用紙が通過するパスが回転するプリンタがあります。厚すぎたり薄すぎる用紙を使うと紙詰りの原因にあることがあります。プラスティックフィルムに印刷するプリンタもあり、プレゼンテーションでスクリーン映写させることができます。
ここに記したような特殊メディアは消耗品経費に影響を及ぼす可能性があるため、印刷に関するニーズを検討する際に考慮にいれるべき点でしょう。
インクとは一般的に言う用語であり、すべてのプリンタが液状インクを使用するわけではありません。例えば、レーザープリンタはトナーと呼ばれるパウダーを使用しますが、インパクトプリンタはインクを染み込ませたリボンを使用します。印刷時にインクを加熱する特殊なプリンタもあれば、メディアに小さな液滴を吹き付けるものもあります。インク交換のコストは広範囲にわたり、インクが入っているコンテナーが詰め替え(リフィル)できるかどうかや、インクカートリッジを交換する必要があるかによって異なってきます。