話 し 言 葉 と 書 き 言 葉


話し言葉と書き言葉の違いは何かと学習者に尋ねると、

「話し言葉は『です・ます』(敬体)で、書き言葉は『だ』(常体)」

という答えが返ってくることがよくあります。しかし本当にそうでしょうか。「親としての責任」の作文例をもう一度見てみましょう。赤い文字は口語表現です。

子供が何才かによって全然違いますけど、学校に行ってる子供は、学生としてのいろんな責任がありますから、小さい子みたいに遊ばせちゃいけませんちゃんと宿題をさせたり、教科書を読ませたりした方がいい、勉強だけじゃなくて、家の中でも手伝わせなきゃいけないことがいっぱいあります。(略)やっぱり、親になるのはとっても大変でしょう ね

では、試しにこの作文の「です・ます」を常体(青文字)にしてみましょう。

子供が何才かによって全然違うけど、学校に行ってる子供は、学生としてのいろんな責任があるから、小さい子みたいに遊ばせちゃいけないちゃんと宿題をさせたり教科書を読ませたりした方がいい、勉強だけじゃなくて、家の中でも手伝わなきゃいけないことがいっぱいある。(略)やっぱり、親になるのとっても大変だろう

敬体を常体に変換しても、文章全体は「書き言葉」の文体にはならず、むしろくだけた話し言葉のようになりました。このことから、「です・ます」が話し言葉の文体で、「だ」体は書き言葉の文体だ、という単純な説明では不十分だということが分かります。むしろ「くだけた会話ではshort/plain formが使われると習ったのに、なぜ『改まった書き言葉』に同じ形が使われるのか」と混乱してしまう学習者もいるため、両者の違いを明確にさせる必要があります。

また、冒頭の質問に対し、

「声で伝えるが話し言葉で、文字を使うのが書き言葉」

と答える学習者には、矛盾する例を提示し、この説明でも両者の違いが説明できない場合が多いことを認識させることも重要です。例えば、音声伝達の際も、ニュースや改まった講演などのように、文中に書き言葉のスタイルが使われることが少なくありません。その一方、チャットやツイッターのように、話し言葉をそのまま文字表記する場合もあれば、丁寧な手紙のように、文中は書き言葉のスタイル、文末は「です・ます」体になるものなど様々です。

書 き 言 葉 と は ?


以上のように「書き言葉」のスタイルと一概に言っても解釈の仕方が多様なため、「書き言葉」の定義を学習者に明確に提示してから指導を行うことが大切です。「書き言葉」とば文字表記されたものに限らず、音声伝達の際にも使われる改まったスタイルを指すということ、反対に文字表記の際にも口語表現が使われることもあること、「書き言葉」のスタイルの中にも「である」体のように、非常に硬いスタイルもあることを伝えます。

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