書き言葉の文体:文中


連用中止形は、日本語の文章の中での使用頻度が非常に高いにもかかわらず、特に説明もなく初級の教科書の読み物の中で使われることもあるため、以前から質問を受けることがよくありました。ここでは、書き言葉の文中の決まりとして、以下の7つを導入します。


まず、最も基本的な3つの形を導入します。

導入の際、以下のような説明を加えておくとよいでしょう。

1)連用中止形は、同じ文に複数回使える。

  例:銀行に行って、お金をおろして、授業料を払いに行った。

    → 銀行に行き、お金をおろし、授業料を払いに行った。

2) 連用中止形は、文末が「です・ます」体の手紙やエッセイなどでも使われる。

例:先日はごちそうしていただいて、ありがとうございました。             →いただき

3) 「来」「見」「出」など、一文字の短い連用中止形は、使用頻度が低い。

例:友人の結婚式に出て、スピーチをした。
       「出、」の代わりに「出席し」など、他の表現が使え         ないか考えるとよい。


中上級向けの総合教科書では、まず①から③のみ導入されることが多いですが、ここでは同時に④-⑦の決まりも導入します。断片的ではなく「文中の決まり」というまとまりとして認識する方が、学習者には書き言葉と話し言葉の使い分けを理解しやすいということが、過去の実施結果と学習者の声から分かったためです。

④と⑤は、動詞の否定形です。文中で使われる動詞否定形には「〜なくて」(④)と「〜ないで」(⑤)がありますが、両者を導入し、「いる」と「する」の否定形は、不規則に「おらず(に)」と「せず(に)」となると説明を加えます。

④の「Vなくて」は、形容詞の否定形(③ )と混同して「〜なく」と答えてしまう学習者が非常に多いので、導入時に注意が必要です。動詞の否定形「〜なくて」は、「〜ず」になると説明します。ただし動詞「ある」の否定「なくて」の場合は「なく」になります。(「あらず」という硬い表現は、このレベルではまだ導入しません。)

例:時間通りにタクシーが来なくて、飛行機に乗り遅れた。           来ず (❌ 来なく)

★ 動詞「ない」の場合:なくて→なく

例:休憩がほとんどなくて、昼食が取れないことも多い。           なく


同様に、「〜かもしれない」「〜なければならない」も、「〜かもしれなく」「〜なければならなく」と間違える学習者が多いので、導入時に説明しておくと効果的です。

〜かもしれない     例:留守かもしれなくて→留守かもしれず
                         (Xかもしれなく)

〜なければならない  例:覚えなければならなくて→覚えなければならず
                           (Xなければならなく)


動詞の否定形の他に、「〜ていて/〜ていなくて」の書き言葉の形も導入します。これは「いて→おり」(①)と 「いなくて→おらず」(④)と同じパターンですが、最後の「て」を落として「〜てい」「〜ていなく」としてしまわないように注意を促します。

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