学 習 効 果


この指導法の実施による学習効果を観察するため、書き言葉の指導が実施される前と後に同じ学習者によって書かれた文章を比べてみましょう。話し言葉で書かれた部分は赤文字、書き言葉は青文字で記してあります。但し「です・ます」「だ・である」体は色を加えずそのままにしてあります。また、以下の作文例では、明らかな文字の間違いなどは教師により訂正されています。


青い部分(しかし、様々な、少なく、など)に、書き言葉の導入の成果が見られます。 前の作文にあれ程多く見られた口語表現は殆ど見られず、作文全体から受ける印象も大きく変化しました。

次の例も同様に、同じ学習者によって書かれたものです。


この例でも、赤い部分がなくなり、青い部分に書き言葉習得の成果が見られます。上の2つの例は、書き言葉の指導前と、全てのセットが終わった後の作文の比較ですが、この間約6週間かけて書き言葉の指導が行われています。

習 得 の 過 程


学習者が書き言葉を習得していく過程を観察するために、指導の各段階における作文を比較してみましょう。



書き言葉の導入が始まる前の学期始めの作文は、他の例と同様、口語表現に満ちていますが、次の作文では口語表現と書き言葉が混在しています。これは、学習者がこの時点でまだセット1とセット2の書き言葉の決まりしか知らないためですが、導入された項目の学習効果は観察することができます。そして、次の作文例が示すように、全てのセット終了後は、学習者が積極的に書き言葉のスタイルを試し、着実に身に付けていっていると言えるでしょう。


以上のように、6週間という短い期間で学習者の書く文章からは口語表現が排除され、導入前とは印象が大きく変わりました。以前は宿題や作文にその都度コメントしても定着しなかった書き言葉の使い方ですが、この指導法により学習者は「書き言葉」をひとつのまとまった概念として捉えることができるようになり、習得が短期間で可能とななったのではないかと思います。