文体の決まり:文末
文末のスタイルの統一については、初級で導入するにもかかわらず、書き言葉の指導開始時には、まだ文末に「です・ます」体と「だ」体を混在させてしまう学習者もいます。導入時に再確認した上で、まず、次のような最も基本的な文末の形を紹介します。
表では話言葉のスタイルとして、「です・ます」体のみ載せてありますが、もちろんくだけた話言葉のスタイルもあります。そして、表の中の「書き言葉」の文末の形の多くが「くだけた話し方」の形と同じであるため、戸惑う学習者もいるようです。しかし、例えば、「問題じゃないよ。」は話し言葉ですが、書き言葉では「問題ではない。」となりますし、質問文では「調査するの?」と「調査するのか。」と、決まりが大きく違います。「書き言葉」には「くだけた」意味は含まれないこと、質問文や終助詞の扱いなどでルールが大きく異なることを説明(後述)しながら、学習者が両者を同一視しないよう注意を促す必要があります。
文末の決まりとして、上記の表以外に次のものも加えます。
書き言葉の質問文
書き言葉の文末では、終助詞はは通常使われませんが、質問文の場合は、「か」が必要だということを確認します。「〜んです」の含まれた質問文は学習者が特に練習を要するところなので、類似問題を多く用意して、定着を図ります。
「です・ます」体だけではなく、くだけた話し言葉と書き言葉の質問文の形の差異にも気を付けます。
例1と2のように、書き言葉では文末に「か」が必要で、「?」は使われません。
例1:原因は何?➡ 原因は何か。
例2:見直したの?➡ 見直したのか。
また、例3のように、「〜かな/かなぁ」は「〜だろうか」になります。
例3:できるかなあ。➡ できるだろうか。
その他の決まり
短縮形は書き言葉では使われないことも確認しておきます。
ここで、「〜なくてはいけない」より「〜なければいけない」の方が、そして「〜なければならない」はさらに書き言葉的であるという説明も加えるとよいでしょう。
終助詞
質問文の「か」以外の終助詞(「よ」「ね」「わ」「ぞ」など)は、書き言葉では使われません。例を見てみましょう。
① 事実でしょうか。➡ 事実だろうか。(質問文)
② 報告してくださいね。➡報告してほしい。
③ 必要な書類がありませんよ。➡ 必要な書類がない。
① の質問文では、書き言葉の文末に「か」が必要ですが、②と③ の例のように、それ以外の終助詞は書き言葉では使われないので、学習者に注意を促します。
実は書き言葉の指導の第一回目の実施の際、導入時にこの項目を説明せずにオンラインの書き換え問題を与えたところ、終助詞を落とさずに答えた学習者が多くて驚きました。それまでも作文などでその都度訂正していたのですが、学習者には改めて説明が必要だと認識した項目です。
間投詞
「さあ」「まあ」「ああ」「ええと」なども、改まった書き言葉では使われませんが、これも説明なしだと意外に間違いが多かったので、途中で加えた項目です。
まあ、いいでしょう。➡ よいだろう。
さあ、始めましょう。➡ 始めよう。